秘密の記憶は恋の契約
「っと・・・」

よろけた彼は振り向いて、とても驚いた顔をした。

「あ、あの・・・部屋、片付けたの!」

「え?」

「そ、その・・・だから・・・あの・・・・・・。もし、お茶でも・・・よかったら」


(・・・・・・誘ってしまった・・・)


もう少し、一緒の時間を過ごしてほしくて。

自分の行動に戸惑いながらも、私は必死に、彼をこのまま引き留めたかった。


(なんて・・・。どうしよう。これで『帰る』って断られたら・・・)


疲れてないって、綾部くんはさっき言ってくれたけど。

きっとあれは私のためだ。

「ひと休み」って、考えることもできるけど、綾部くんは、早く自分の家に帰りたかったかもしれない。


(こんなこと言って・・・迷惑だったかな・・・)


ドキドキと、彼の返事を待つ沈黙。

言わなければよかったと、後悔をし始めた時だった。

「・・・そうだな」

綾部くんが、私の頭にポンと大きな手を置いた。

「じゃあ、お言葉に甘えて。うまい紅茶でも、美咲に出してもらおうかな」

そう言うと、彼は色っぽい目線を投げかけて、私に優しく微笑んだ。







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