秘密の記憶は恋の契約
「・・・ここなの」

三階建てのマンションの、2階の角にあたる部屋。

カバンから鍵を取り出しながら、玄関の前で彼に言う。

ガチャリとドアを開錠すると、私は「どうぞ」と言って彼を中へと促した。


(いつ来てもらってもいいように、あれから掃除はしてたんだけど・・・)


今朝は少しバタバタしたから、ところどころに散らかりがある。

私は何気なさを装って、置きっぱなしにしていた麦茶のコップをささっとシンクに運んでいった。

「ふーん・・・。かわいい部屋」

焦る私とは裏腹に、落ち着いた様子の綾部くんは、ぐるりと部屋を見渡しながら、私に笑いかけてきた。

「なんか美咲らしい」

「あ・・・えっと、そうかな?」

「うん。とくにここ」

自分としては、ナチュラルテイストでシンプルにしているつもりだけれど。

本棚の上のぬいぐるみゾーンをにやりと指摘されたなら、『かわいい』と表現されたことに気恥ずかしさを感じてしまう。


(これだけは、やっぱり譲れないんだよね・・・)


おしゃれと自分の趣味の共存。

雑誌に出てくるような部屋には、実際なかなか出来ないものだ。
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