秘密の記憶は恋の契約
「この眠たそうなへんなネコ、ほんとにおまえ好きだよな」

言いながら、綾部くんは本棚の上からぬいぐるみのぐーすかにゃんこを手に取った。

首根っこをつかむ様子は、本物のネコが相手のようだ。

「『ぐーすかにゃんこ』だよ。かわいいでしょ」

「ぐーすか・・・。ふざけた名前だな・・・」

顔をしかめて、ポツリと呟く綾部くん。

そのままそれを持ち上げて、寝ぼけ顔のネコのぬいぐるみを真剣な顔でじっと見つめた。

「・・・かわいいのか、これ」

怪訝そうに呟く彼。

ぐーすかにゃんこは、半開きの目で綾部くんと対面している。

その様子がなぜだかとても可笑しくて、私は「かわいいよ!」と反論しながら「ふふっ」と小さく笑ってしまった。

「・・・よくわかんないけど。まあ、美咲が持つとかわいいか」

そう言うと、綾部くんは私の胸にぐーすかにゃんこを押し付けた。

咄嗟にそれを抱き留めた私に、「やっぱり」と言って彼が笑った。

「美咲効果だな」

甘い目線で、彼が私を見下ろした。

私は途端に恥ずかしくなって、「そうだ!」と突然話題を変えた。

「あ!あの・・・今紅茶いれるから!とりあえず・・・このへん、テキトーに座ってて!」

ローテーブルの下にあった座布団を、彼の足元に滑らせる。

そしてそのまま、リビングの横にあるキッチンへと逃げるように移動した。
< 274 / 324 >

この作品をシェア

pagetop