秘密の記憶は恋の契約
「・・・ああ。そうだ。最初に約束してたこと。さすがにもう教えないとな」

そう言うと、綾部くんはベッドに頬づえをついて私のことを見下ろした。

「えっと・・・なんだっけ?」

彼の言葉にピンとこず、私がキョトンと返事をすると、綾部くんは「なんだ」と言って吹き出した。

「忘れてるのか。おまえに付き合ってもらうために・・・オレが最初に言っただろ。

『オレのこと好きになったら、記憶がないときのこと教えてやる』って」

「あっ・・・!」

そうだ。

同期で飲み会をした翌日、私は会社の休憩室で、綾部くんに抱きしめられている状態で目を覚ましたんだ。


(全然わけがわからなくて・・・。

後から『オレと付き合って、本気で好きになったら教えてやる』って、記憶を交換条件に付き合うことになったんだっけ・・・)


それほど時間は経ってないのに。

あの時のことは、もうずいぶん昔のように感じてしまう。


(いろいろなことがあったもんね・・・)


私はそんな流れの中で、いつの間にか、綾部くんのことをとても好きになっていたから。

だから・・・そんな約束は、すっかり忘れてしまっていたんだ。
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