秘密の記憶は恋の契約
すると彼は怒った顔で、私のことをジロリと睨んだ。

「オレはいいんだよ。愛情の裏返しだろ」

「そんなこと言ったって・・・ほんとにいつもなんだもん。たまには反抗したくもなるよ」

「いや、ダメだ。おまえが言うとマジ焦る」

「・・・」

「とにかくダメだ。わかったか」

そう言うと、綾部くんは再び私の首元を、長い指でくすぐりはじめる。

必死にそれに抗う私を、彼は絶対逃がさない。

「返事しろ」

「わかっ・・・う、んっ・・・」

頷こうにも、くすぐったくて笑いが全く止まらない。

なおも攻撃を続ける彼に、私は「タイム!」と言ってぎゅっと小さく身体をまるめた。

「ほんとに・・・もう・・・わかったからっ・・・」

笑いながら、なんとか降参の意思を伝えると、綾部くんは動きを止めて、私にコツンと額を合わせた。

至近距離の彼の眼差し。

それはまっすぐに、私の瞳を捉えていた。

「・・・約束だぞ」

「うん」

ちょっと・・・いや、結構強引な彼だけど。

私は彼のこういうところも、決してキライじゃないんだ。

「約束」と口にして、私は彼にキスをする。

一瞬目を細めた彼は、とても嬉しそうな顔をした。

愛されているという実感。

私は彼に腕を伸ばした。

そして私たちは一晩中、じゃれあうような初めての夜を二人で過ごしたのだった。






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