秘密の記憶は恋の契約
ビジネス街にある22時のファミレスは、ポツポツと客の姿があるだけで、全体的にがらんとしていた。

座席に余裕があるため、私たち二人は、窓際に位置するゆったりとした4人掛けのボックス席に案内された。

テーブルの脇に立てかけてあったメニュー表から、綾部くんはとんかつ定食を、私はハンバーグ定食を注文する。

「かしこまりました」と言ってウェイトレスが去っていくと、私たちの間には恐ろしいくらいの静寂が訪れた。


(えーっと・・・)


どうしよう。

何か話した方がいいんだろうけれど、緊張やら気まずさやらで、頭の中は真っ白だ。

向かい側のど真ん中に座っている彼の視線から逃れるように、私はさりげなく窓の傍へと移動して、外を眺めるフリをした。

「なあ」

ため息交じりの彼の声。

「もっと、普通にできないの?」

「えっ!?」

「仕事も。めちゃくちゃやりにくいんだけど」

チラリと彼を見ると、ものすごく不機嫌そうな顔で私のことを見つめている。

「今朝からオレのこと避けてるだろ。ヘンな敬語は使うし、全然目は合わせないし。

原因はわかるけど・・・もっと普通に出来ないの?」
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