秘密の記憶は恋の契約
「わ。もう赤ちゃん仕様だね」

部屋の真ん中には大きな丸い座卓が置かれ、和室へと続く角のスペースには、ベビーベッドやバウンサー、衣装ケースなどが置かれていて、かわいらしい赤ちゃんコーナーが作られていた。

「うん。せっかく引っ越すんだから、そのついでに全部準備しちゃおうかって」

「そっか。早いに越したことはないもんね」

「んー・・・まあ、早すぎる気もしたんだけどね。悠人がすごいはりきっちゃって」

棚田くんに目を向けて、詩織が「毎日うるさいんだよ」と苦笑する。

けれどその表情は、とても幸せそうだった。

「ふふっ。棚田くん、いいパパになりそうだね」

「うん・・・そうだね。デキ婚だから、最初は不安だったけど。結果オーライかもしれない」

「そっかー。いいなあ」

女子3人でまたもワイワイ盛り上がっていると、綾部くんが「美咲」と言って右手に持った箱を掲げた。

「あ、うん」

綾部くんから箱を受け取り、私は詩織にそれを手渡す。

「これ、プリン。来るときにみんなで買ってきたんだけど・・・。食べられるかな」

「わー!ありがとう。うん、体重もいいペースだし。プリンなんて全然平気。・・・わ、おいしそう!ゼリーもあるね」

箱を開けた詩織の顔が、一瞬にしてほころんだ。

私たちは顔を見合わせて、その表情にほっとした。
< 300 / 324 >

この作品をシェア

pagetop