秘密の記憶は恋の契約
「覚えてないおまえが悪い」

「なっ・・・!」

冷たい口調で言われ、私はぐっと押し黙るけど。

「じゃあ・・・なんで夕飯になんて誘ったの?今朝のこと、何か話そうと思ったんじゃないの?」

無理矢理連れて来られた、残業後のファミリーレストラン。

ランチの誘いだってそうだけど、今だって・・・昨夜から今朝にかけての出来事を、きちんと話し合うために誘ったのだと思っていた。

「別に・・・。昨日のこと話そうと思って誘ったわけじゃない。

・・・覚えてないんだろ?」

念を押すように確認され、私は「うん」と短く頷く。

「覚えてないけど・・・。じゃあ・・・なんで誘ったの?

ほんとに・・・ただ単に、夕飯一緒に食べるだけ?」

誘われた意味がわからずに、もう一度綾部くんに問いかける。

すると、しばし考えるような間をおいた彼は、意を決したような眼差しで私のことを見つめてきた。

「おまえに、告白しようと思ったから」

「・・・え?」


(えっ!?)


表情を変えずに言った彼の言葉に、私は耳を疑った。


(いま・・・告白って言った!?)


「ずっと、おまえのことが好きだった。だから、オレと付き合ってほしい」

「・・・・・・えっ!?」

そのタイミングで、ちょうどよく注文した料理がテーブルの上に届いた。

私たちの話を聞いたであろうウェイトレスの女の子は、「すみません!」と言いながら、ものすごい勢いでお皿を置いてすぐさまその場を去って行った。
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