秘密の記憶は恋の契約
真っ白な壁に、「welcome」と書かれたプレートが揺れる茶色のドアを開くと、かわいらしい雰囲気のカフェ空間が広がった。

人気店なのか、テーブル席はどこも満員。

「ここでいいですか?」と聞かれて頷いた私たちは、窓際に設置されたカウンター席に並んで座った。

テーブルには小さな花瓶が置かれていて、紫陽花が一輪、さり気なく飾られている。

「ここにも紫陽花だね」

「そうだな。やっぱり今は紫陽花だ」

今日、何度も聞いたそのフレーズに、私は思わず笑ってしまう。


(ふふっ。ここまで紫陽花が好きなんて。なんか・・・かわいいかも)


そんなことを思いながら、店員さんが持ってきてくれたメニュー表に目を通す。

疲れた時には甘いもの、ということで、私は「店長おすすめ」と書かれたチーズケーキとカフェラテを、綾部くんは「腹減った」と言ってサンドイッチとコーヒーを注文した。

「長谷寺もよかったね」

「そうだな・・・久しぶりに来たけど、やっぱ広いし眺めもいいよな」

今日見た花やお寺の話をしていると、私たちの前に、注文の品がそれぞれ届く。
< 79 / 324 >

この作品をシェア

pagetop