恋愛ドクター“KJ”
 二人が、つまりはKJとアスカの二人が会ってから30分が過ぎていた。
 が、話は進まない。

 「私、思うんだけど、サイダーじゃなくてコーヒーなんて飲んでるから、アイデアが出ないんじゃないの?」
 アスカは、皮肉っぽく言った。

 「サイダーは関係ないよ。食事を済ませた後で血糖値は上がってるから。
 それより、マックのコーヒーって、新しくなってからすごく美味しいんだ。
 スタバのコーヒーよりも人気があって、売上げも以前の2倍らしいよ」
 アスカのセリフをどう受け止めているのか分らないが、話の内容も話し方もKJっぽい。

 「それは貴重な情報をありがとう。
 でもね、今はみどりよ。
 み・ど・りっ!」
 KJの真剣みが足りないと感じているアスカは、尻を叩く。

 「ああ。そうだね。
 ジェットコースターもお化け屋敷もダメっていうなら、正攻法でいくのもいいと思うんだ。
 昨日の、ドリンクバーのグラスの感じだと、普通にコクれば上手くいきそうだしね」
 KJには、すでに次の作戦が思い浮かんでいるらしい。

 「そういえば、昨日も、グラスがどうとか言ってたけど、なんなの?
 普通のグラスでしょ。
 それとみどりと、何か関係があるの?」
 アスカには、KJの言葉の意味が分らなかった。
 どこででも見かける、ファミリーレストランで使われているグラスでしかなかった。

 「ああ、いや、違うんだ。
 グラスそのものの話じゃなくて、二人がグラスを置いていた場所に意味があるんだよ」

 「場所? 位置??」
 みどりと祐二の二人は、それこそ普通に、テーブルの上にグラスを置いていた。
 特別な何かはなかった。

 ますますアスカには分らなかった。



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