イジワル婚約者と花嫁契約
さっきまでのドキドキを返して欲しい!
どうして私はこんな失礼な人に、ドキドキなんてしちゃったのだろうか。
そうだよ、容姿完璧で才能もある人なんて小説の世界ではみんな性格が悪いって決まっているんだ。

なのにすっかりと彼に騙されてしまった。
全然完璧な人なんかじゃないのに。

一気に思っていることを伝えたものの、当の本人は言い切った私をキョトンとした表情で見つめてるだけ。
さっきまで睨みつけていたというのに、何も言い返してこない不気味さに後退りしてしまった。

「あっ……」

「っバカ!」

彼の様子ばかり伺ったまま後ろも見ずに後退りしてしまった時だった。
すぐ後ろにあった石に躓き、視界がゆっくりと反転していく。

普段の私だったら、ちょっと石に躓いたくらいでは倒れたりなどしない。
どうにかバランスを保っていられただろう。

だけど今の私にはそんな高度な技は無理だ。
だって窮屈な着物に加え、履き慣れない草履なのだから。

これ、絶対ヤバイパターンだ。
尻餅ついて痛い思いして、高い着物汚して。……さらに彼に笑われるというオプション付き。
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