イジワル婚約者と花嫁契約
健太郎さんが女慣れしていようと、二重人格だろうと、私は彼が好きなのだ。
横顔ひとつでこんなに胸が締め付けられてしまうくらいに――……。



「ここ、ですか?」

あれから健太郎さんの車に揺られること数十分。
辿り着いた先は、近くのショッピングモールだった。

車から降りポカンとしていると、施錠を済ませた健太郎さんが隣に立った。

「だって灯里、今日はすっげ可愛い格好しているから、みんなに見せびらかそうと思って」

「なっ……!」

囁かれた殺し文句に一気に体温は上昇してしまう。

「それ、俺のために着てきてくれたんでしょ?」

「それはっ……!」

言葉に詰まる。
たった一言「そうです」が言えない。
千和さんに買い物に付き合ってもらって散々悩んだ末に買った服。
少しでも健太郎さんに似合う女性になりたくて選んだ服なのに。

花柄のタイトスカートに、ホワイトのフリルがついたノースリーブ。

気付いてくれて嬉しいのになんで言えないんだろう。
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