イジワル婚約者と花嫁契約
健太郎さんの過去に嫉妬するなんてみっともない。
そう分かっていても、言わずにはいられず健太郎さんの元へと駆け寄った。

「あのっ……!」

「悪い、病院からだ」

タイミングよくかかってきた電話は病院からで、一気に表情が引き締まる。

「はい、佐々木です」

完全に仕事モードだ。

真剣な面持ちで電話をしながら、お店を出て人混みの少ない場所へと行ってしまった。

「仕事……かな?」

働いているところを見たことないからいまいち想像できないんだけど、健太郎さんは医者なんだよね。
休日でも急患が入れば行くって言っていたし。
きっとまともに一日中休める日なんて、なかなかないよね。
今日だってせっかく早く終わったのに、私と会ってくれたし。……もしかしてまたこれから仕事なのかな?
全然休めていないのに――……。

「私……なにやっているんだろ」

健太郎さんが好きって騒いでいるだけで、健太郎さんのことなにも分かっていない。
労わることも心配することも、知ろうとすることもしないで、好きって気持ちだけでいっぱいで。

「ねぇねぇ、さっきの人かっこよくなかった?」

そんな時聞こえてきたヒソヒソ話に過剰に反応してしまう。
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