イジワル婚約者と花嫁契約
なにも答えない私に再度健太郎さんは囁いた。
「好きだよ」と――。

そのまま近づく距離に、ゆっくりと瞼を閉じていく。

初めてのキスは触れるだけの優しいキス――。

周囲からは冷かす声が聞こえてきたけど、今は健太郎さんのことで頭がいっぱいだった。

離れていく唇。そのスピードに合わせるように瞼を開ければ、とびきり甘い顔をした健太郎さんと目が合ったと思ったら、また一瞬のうちに唇を奪われてしまった。
今度は瞼を閉じる暇さえ与えられず。
そしてまた、ギュッと抱きしめられた。

「あー……やばい、このまま灯里を帰したくないんだけど」

息を漏らしながら発しられた言葉に、ほんのり顔が熱くなる。

私だってもう大人だ。経験がなくたってさっきの言葉の意味くらい充分理解できる。

「……なんて、な。さて、せっかく会えたしどこかで飯でも食っていこう」

明るくそう言いながら離れていく健太郎さん。
咄嗟にその腕を掴んでしまった。

「……灯里?」

自分でも驚いている。どうして腕を掴んでしまったのか。
だけど思ってしまったの。健太郎さんと同じように今日はこのまま帰りたくない。
もっと健太郎さんと一緒にいたいって。
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