イジワル婚約者と花嫁契約
鼻を摘まれてしまい、痛さに声が漏れてしまった。
なのに健太郎さんは可笑しそうに笑うだけ。

「マスク外れてよかったな。どうだ?調子は。まだ痛むか?」

急にいつもより優しい口調になったものだから、調子が狂ってしまう。
さっきまでと全然違うから。
それに、健太郎さんが白衣を着ているから?

「……ちょっと痛みます」

色々な思いが駆け巡るも、正直に答えるけれど、どうしても健太郎さんの顔が見られなかった。

「そりゃそうだろうな、まだ術後一日しか経っていないんだから。……で?痛みじゃないとしたら、灯里の元気のない原因はなんなんだ?」

「――え?」

ギシっと軋むベッド。
それは健太郎さんがベッドに腰掛けた音――。
そのまま前屈みになり、ゆっくりと私との距離を縮めてきた。

「バーカ、俺が気付かないとでも思ったのか?……全然違うから。昨夜と」

健太郎さん……。

やだな、また泣いてしまいそうだ。

どうして健太郎さんは私のことを誰よりも分かってくれるのだろうか。
こうやって些細な変化にも気づいてくれるの?
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