イジワル婚約者と花嫁契約
痛む胸を押さえながら、ゆっくりとスマホを手に取る。
健太郎さんの言葉だったら、ちゃんと信じられるから。……だから安心させてほしい。

震える手で電話帳を呼び出し発信ボタンを押すと、すぐに呼び出し音が聞こえてきた。
だけどどんなに鳴らしても、健太郎さんは電話に出てくれない。

まだ仕事中……?

昂ぶった感情は次第に薄れていく。

このままずっと鳴らしていても仕方ないと判断し、電話を切ろうと耳元から離した時。

『灯里?』

急に聞こえてきたのは、健太郎さんの私を呼ぶ声。

ドクンと心臓は鳴り、一気に高鳴り出す。

「健太郎……さん?」

すっかり諦めていたのに、急に健太郎さんが電話に出たものだから声が裏返ってしまった。
すると電話越しからは健太郎さんの笑い声が聞こえてきた。

『そうだよ、俺だよ。……どうした?なにかあったのか?』

耳を燻る健太郎さんの優しい声に、涙が込み上げてくる。

やっぱり私、信じられないよ。
だからお願い、健太郎さん。
健太郎さんの声で言葉で私を安心させてほしい。……信じさせて欲しい。
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