イジワル婚約者と花嫁契約
健太郎さんは梅沢さんのことを、『由美』って呼ぶんだ――。

『違うんだ、灯里』

言い訳してこようとする健太郎さんの声に、自分の声を重ねた。

「梅沢さんは健太郎さんから、私とお見合いするから別れようって言われたと言っていました。それはつまり家のために私とお見合いしたってことなんですか?」

『違う、そうじゃない』

「じゃあ梅沢さんの言っていたことは、全て嘘だったんですか!?」

いつになく強い口調になってしまう。

話しているのが電話でよかった。
だって今の私の顔、絶対酷いことになっているもの。

本当はこんな風に責め立てたかったわけじゃない。
ただ健太郎さんの声で言葉で、安心したかっただけだった。

それができなくなってしまったのは、『由美』と呼ばれている梅沢さんに酷く嫉妬してしまっているから――。

「なにか答えて下さい!」

それでも昂ぶった感情を抑える術もなく、感情的に気持ちをぶつけてしまう。

いつの間にか溢れてしまった涙。
だけど泣いていることを悟られたくなくて、拭うことも鼻を啜ることもせず、ただ電話越しの健太郎さんの答えを待った。
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