イジワル婚約者と花嫁契約
「言っちゃった……」

スマホを握りしめる手が小刻みに震えてしまう。

だけど後悔はしていない。
だってもうこれ以上苦しい思いをしたくない。
健太郎さんの話なんて聞きたくない。

このまま健太郎さんとの関係を続けていくなんて無理だもの。
それならいっそこのまま終わりにしたい。
最初からなかったことにしたい。

少しでも健太郎さんのことを好きなまま、終わりにしたい……。

フラフラとした足取りでベッドサイドに歩み寄り、枕に顔を埋めるように倒れ込んだ。

「うっ……ひっく……」

一階にいる両親に聞かれないよう、声を押し殺して泣き続けた。
一生分の涙を流すように、一晩中ずっと――……。



健太郎さんからあの日の夜以降、連絡はない。
三日過ぎた今日も――。

「灯里、今日はどうだ?」

いつもの朝。部屋をノックする音と共に聞こえてきたのは、お兄ちゃんの声。

「……ごめん、今日も休ませてもらってもいいかな?」

ドアを開けることなく伝えると、ドアの向こう側から「分かった」と一言返ってきた。
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