イジワル婚約者と花嫁契約
ますます覚えていなかったことに後悔してしまう。
身寄りがなかったふたり。……もしかしたらふたりの葬儀も、健太郎さんの両親が手配してくれたのかもしれない。

「だけど一緒に暮らす灯里の姿は、とてもじゃないけれど見ていられなかったよ。毎日泣いていて苦しそうで、見ているこっちが泣きたくなった。……俺の家も灯里にとっては、両親と過ごした思い出の場所だったんだろうな。何度も三人で遊びに来ていたのだから」

当時のこと、よく覚えているわけではない。
だけどなんでかな?健太郎さんから当時の自分の話を聞いていると、胸が苦しくて仕方ない。
同時にパパとママを失ってしまった悲しみだけは、今でも鮮明に覚えているから……。

「最初はさ、うちの親、灯里のこと養子として引き取ろうとしていたんだ」

「え……健太郎さんのご両親が、ですか?」

信じられない話に、思わず聞き返してしまった。

「あぁ、だけど日に日に衰弱していく灯里を目の当たりにして、これからもふたりの思い出が残るこの家で生活させるのは、酷だと判断したんだ。……それと親戚からの反対の声もあったらしい」
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