イジワル婚約者と花嫁契約
当たり前な話だよね。他人の子を引き取るなんて誰だって反対するに決まっている。

「今になれば大人の理由で理解できたけど、子供だった俺には両親の判断は理解できなかった。あんなに弱っている灯里を放り出すことが信じられなかったんだ。……だけどどんなに反対したって所詮子供の俺にはどうすることもできなかった。だから誓ったんだ」

そう言うと健太郎さんは私の方へ身体を向け、静かに手を取って自分の頬に寄せた。

「必ず大きくなったら迎えにいく。……俺が灯里のこと幸せにしてやるって」

ドクンと心臓が跳ねる。
健太郎さんの頬に触れる手が熱い――……。
なのに真剣な瞳で見つめられては、視線を逸らせない。

「だからもう泣くな、俺が灯里のことを世界で一番幸せにしてやるから。……別れの日、そう告げたらいつも泣いていた灯里が笑ってくれたんだ。『ずっと待ってる。だからケンちゃん、早く迎えにきてね』って」

あ、れ……ちょっと待って。
その言葉覚えがある。……そう、だよ。私、いつも泣いていたのにある日を境に泣かなくなったんだ。

「健太郎さんだったんですね」

「――え?」
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