イジワル婚約者と花嫁契約
頭の中ではちゃんと分かっている。
こんなことをしたって何の意味もないって。
兄なら笑って送り出してやるべきだって。

だけど心がそれをなかなか許してくれないんだ。
この家に明日から灯里がいなくなると思うと、寂しくてたまらない。
あいつがずっと灯里と一緒にいるのかと思うと、悔しく思えてしまう。

灯里の部屋の前でストライキを始めてどれくらいの時間が過ぎただろうか。
最初は止めにきた両親は呆れ果てて一階に降りてしまい、そういえばさっきまで抗議していた灯里は静かになってしまった。

「……まさか窓から出た、とかないよな」

嫌な予感が頭をよぎり、サッと顔が青くなる。

「あっ、灯里!」

慌ててドアを叩き灯里を呼んだ時。

「一体なにをやっているんですか?」

急に聞こえてきたのは、明らかに怒りを含んだ声。
すぐに声がした階段の方へ視線を移した瞬間、目を見開いてしまう。

「え……どうしてうちに?」

きっと今の俺は相当マヌケ面しているに違いない。
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