イジワル婚約者と花嫁契約
だけどマヌケ面にもなってしまう。
俺の目の前にいたのは、キレイにドレスアップした千和だったのだから。

呆気にとられている俺に睨みを利かせながら歩み寄ってくると、灯里の部屋のドアに向かって話し出した。

「灯里ちゃん遅くなっちゃってごめんね。もう大丈夫よ」

千和がそう言うと、部屋の中からこちらへ向かって駆けよってくる足音が聞こえてくる。
するとすぐにドアが開き、今にも泣き出してしまいそうな灯里が出てきた。

「よかった、千和さんが来てくれて……!」

安心したようにホッと胸を撫で下ろし、そのまま千和の胸の中に飛び込む灯里をまるで他人事のように見つめてしまう。
だってそうだろ?
まさかうちに千和が来るなんて誰が予想できる?

「さ、早く行きなさい。……私達も後から行くから」

「はい」

そう言うと灯里は千和の胸の中から離れ、俺を見つめてきた。

その視線にハッと我に返る。

きっと灯里は怒っているはず。
結婚式当日になって駄々をこねるとか、どっちが年上なのか分からないじゃないか。
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