イジワル婚約者と花嫁契約
「はい、どちら様―……」

「久し振り」

遮り発しられた声に、目を見開く。
聞き覚えのある声に半信半疑のまま顔を上げれば、そこに立っていたのは彼――佐々木さんだった。

「え……佐々木、さん?」

みっともなく玄関のドアに手を掛けたまま立ち尽くしてしまう。
そんな私を見て佐々木さんはプッと吹き出した。

「なんだよ、そんな幽霊でも見たような顔しちゃって」

「……っそれはっ!」

そんな顔にもなる。
だってまさか佐々木さんが来るとは、夢にも思わないじゃない。
バカにされているような気がして、表情を引き締める。

「そんな顔にもなります。……急に連絡が途絶えてしまったんですから」

フンと鼻息を鳴らしそっぽ向く。

だって“心配していた”って思われちゃったら嫌だし。

そんな可愛げのないことを思っていると、佐々木さんは予想に反して謝ってきた。

「悪かった。実はあの日カップ麺食べながらスマホいじっていたら、スープの中に落としちゃってさ」

「え?」

視線を向ければ佐々木さんは眉をハの字の下げ、申し訳なさそうに苦笑いしていた。
< 41 / 325 >

この作品をシェア

pagetop