イジワル婚約者と花嫁契約
「呼び方ひとつで人間は、幸せな気持ちになれるものさ。現に俺だって灯里に初めて“お兄ちゃん”と呼ばれた時は、天にも昇る気持ちだったよ」

「そう、なの?」

「あぁ!」

呼び方ひとつで幸せな気持ちになれる、か。

ふと頭に浮かんでしまうのは、佐々木さんのことだった。

確かに“さん”付けってどこか他人行儀なところがあるよね。
友達とだって名前で呼び合うだけで、親近感がグッと増していたし。

「お兄ちゃんも名前で呼ばれたら嬉しい?」

お兄ちゃんの恋愛事情は正直謎だけど、やっぱりお兄ちゃんも呼ばれたら嬉しいって思うのかな?

気になって聞くと、急にお兄ちゃんは興奮したように私との距離を縮めてきた。

「そんなの当たり前だろ!?灯里に“和臣お兄ちゃん”なんて呼ばれたら、どんなに嬉しいことか……!」

えっ!私っ!?

「ちっ、違うよ!その……例えば好きな人、とかだよ」

そっと尋ねると、お兄ちゃんの表情は一変。
勢いよく私の両肩を掴んだ。
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