太陽に恋をして
「送っていただいてありがとうございました」


マンションの前で一緒にタクシーを降りた柳原さんに、そう言ってお辞儀をすると柳原さんはこちらこそありがとう、と笑う。


「じゃあ…おやすみなさい」


すでに10時を回っている。
唯月はもう帰ってるかな。


「楓佳ちゃん」


マンションに入ろうとしたら、後ろから呼び止められた。


「はい?」


「もし良かったら、俺の…彼女になってくれないかな」


柳原さんはそう言うと、あのきれいなひまわりの瞳で私を見つめる。


「…あの」


「いや、返事は今度でいいから。ゆっくり考えて。おやすみ」


言い淀んだ私を見て、柳原さんは早口でそう言うとタクシーに乗り込み帰っていく。


私はしばらくぼんやりとタクシーが去った方向を眺めていた。



「…足が痛い」


エレベーターに乗ると思わず呟いた。
久しぶりに履いたハイヒールでかかとが靴擦れをおこしている。

なんだか色々なことが起こりすぎて疲れちゃった。


エレベーターを下りると、私はほとんど無意識に左に向かい唯月のうちのインターホンをならしていた。




「お母さん、遅くにごめんね。ゆづ、もう帰ってる?」


「さっき帰ってきて、今シャワー浴びてるの。出てきたらそっちに行くように言おうか?」


気を利かせてそう言ってくれたお母さんに、お願いしますと伝えると、自分のうちに帰った。
部屋の中は相変わらず真っ暗で、ママはまだ帰ってきていない。


私は自分の部屋で、かかとにバンドエイドを貼りながら、唯月が来るのを待った。

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