太陽に恋をして
10分もたたないうちに唯月が部屋に入ってきた。

お風呂上がりの唯月の身体からは、ほかほかと湯気が出ていて、私は顔をしかめる。


「髪くらい乾かしてから来ればいいのに」

ドライヤーを取りに行き、唯月の髪を乾かしながら、本当に仕方ないんだから、とぼやく。


唯月からはボディソープのいい香りがして、まるで子どもみたいだ。


「ふうちゃんが呼ぶなんて珍しいから」

しっかりと髪が乾いたことを確認してドライヤーを切ると、私は唯月の横で三角座りをする。


「あのね、私今日、柳原さんと公園のイルミネーション見に行ってきたんだけどすっごくきれいで」

「ふうちゃん」


唯月が私の話を遮る。


「それ、言うために呼んだの?」


「違うの、イルミネーションがきれいだったっていう話じゃなくて」


いつになく真剣な顔をする唯月を見て、そんなこといちいち報告しなくていい、と言われたことを思い出す。



「じゃあなに?」


「イルミネーション、明日までなんだって」


だから一緒に…。


「ふうちゃん、もうイルミネーションの話はいいよ」


唯月は最後まで聞いてくれなかった。


履き慣れないハイヒールで靴擦れをしたことや、イルミネーションのトンネルが星空みたいだったことも、唯月にとってはいちいち報告しなくていい、ことなのかもしれない。



「今日ね…柳原さんに彼女になってくれないかなって言われたの」


これも、もしかしたら報告しなくていいことなのかな。

だけど、今まではなんだって話してきたじゃない。
今まではなんだって相談に乗ってくれたじゃない。
なんだって、笑って相づちをうってくれたのに。




「…俺には関係ない」


唯月はそう言うと、立ち上がった。


「ふうちゃんも俺もいつまでも子どもじゃないんだから、そういうことは一人で決めればいい」



目も合わせず、それだけ言うと唯月は静かに部屋を出ていった。


一人残された部屋の中、私は両膝を抱いてうずくまった。



寂しかった。
ただただ、寂しかった。

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