太陽に恋をして
昨日、靴擦れしたかかとがまだ痛くて、棚に並ぶ小さなティシャツを畳直しながら思わずため息をついていた。

痛いのはたぶんかかとだけじゃないけど。

「楓佳ちゃん、二階のパンケーキのお店、どうだった?」


今日入荷した商品をチェックしながら、加奈さんが話しかけてくる。


「まだかなり並ばないといけないみたいだけど、生まれる前に食べたいのよねぇ」

もう体重のことは気にしないことにしたの、と笑う加奈さんは本当にしあわせそうで五歳も年上なのにかわいいな、と思う。



「私もまだ行ってなくて…」


え?と加奈さんが顔を上げた。


「ゆづくんと行く約束したって言ってなかったっけ?」


「ちょっと予定が合わなくて」


「そっか。じゃあまた行ったら感想を聞かせてね」


そう言ってまた商品のタグを見始めるお腹の大きな加奈さんを見ていると、なんだか申し訳ない気分になった。

だって、行けるかわからないもの。
唯月はもう一緒に行ってくれないかもしれない。


「…行かないかもしれないです」


「どうして?」


顔を上げて私と目があうと加奈さんは不思議そうな顔になる。


「ゆづくんと予定が合わないなら、ほら、三階のなんとかさんと行ったら?」


私は黙って首を横に振った。
柳原さんは甘いものが苦手だし、あんな女の子ばっかりのお店に誘うなんてなんだか悪いし、それに。


それに、私は唯月と行きたかったんだもの。



「なんて顔してるの?ほらスマイルスマイル。もうしょうがないな。そんなにパンケーキが食べたいなら、今日上がったら二人でいこ?ね?」

加奈さんは子どもをあやすように、私の背中をぽんぽんと優しく叩いた。


見当違いのことで慰められながら、やっぱり加奈さんってかわいいな、と思った。
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