形なき愛を血と称して。【狂愛エンド】
(三)
一週間と言った手前であっても、リヒルトが部屋に赴いたのは一日後のことだった。
どんな空腹になろうとも、トトが、切り離された薬指をむしゃぶるさまは拝めないと思うなりに、恋しさ募りやってきた部屋。
貰ったばかりの猫のように部屋の隅に縮こまるトトを見つつ、昨日落とした位置から僅かたりとも動いていない薬指を確認した。
「一日で、こんなに腐る物なんだねぇ」
もったいないから、早く貪りなよ。の意味を込めた声を聞いたトトは、こちらに顔を向けず、震えたままだった。
腕だけの移動でも無理をしたか、拘束されたままの足首から出血がある。次は足を消毒し、手を縛るかとリヒルトの足がそちらに向いた矢先。
「ん?」
つま先に、こつんと、何かがあたった。
石ころに近しい白い物。靴裏についていたものが転がったかと思えどーーすぐに訂正した。
焦燥する。石ころを摘まみ、まじまじと観察し、心臓が止まる思いとなった。
「なんてことを……!」
大声と共に駆け寄る足。びくつくトトに構わず、リヒルトは彼女の顎を持つ。
「見せない、早く!」
主語が抜けた命令でも、トトには十分伝わる。
伝わったからこそ、固く口を閉じた。