殺戮都市~バベル~
「でも……これでわかった。こいつの力が……奈央……帰れ」


フフッと笑って……沼沢は奈央さんを見詰めたまま動かなくなった。


しばらくして、その身体が光の粒へと変化して行く。


奈央さんを守ると誓った沼沢が死んだら、復活するまでの間、守る事が出来なくなってしまう。


俺は、沼沢に奈央さんを託されたんだと、勝手だけどそう解釈して日本刀から手を放した。


「復活したら……会いに来るからね」


光の粒が空気中に溶け込んで、沼沢の身体が全て消えるまで、奈央さんは微笑んで見ていた。


「後味が良いとは言えないけど、良くやったよ真治!」


今まで傍観していた雪子さんが、ゆっくりとこちらに近付いて来る。


どうして手伝ってくれなかったんだと、少し前の俺なら言っていたかもしれない。


沼沢の強い想いに触れ、乗り越えなければならない壁だと、終わってから気付く事が出来た。


「でも……三人がいなきゃ、俺は死んでました。こんな勝ち方で良かったんでしょうか?」


俺の力だけで勝ったわけじゃない。


沼沢は一人で戦ったってのに、俺は四人で戦ったようなものだ。


だけど、そんな疑問を雪子さんは笑い飛ばした。
< 360 / 1,451 >

この作品をシェア

pagetop