冷徹なカレは溺甘オオカミ
悶々としながら、ひたすら足を進めるわたし。そしてその左隣りを、同じく無言のまま歩く印南くん。

けれども少しの間の後、彼が口を開く。



「柴咲さん、よかったらこれどうぞ」



そんな言葉に目を向けてみれば、印南くんが自分の首に巻いていたグレーのマフラーを外しているところで。

目の前にためらいなく差し出された厚手のそれに、わたしは一瞬唖然。

すぐに我に返って、ぶんぶんと片手を顔の前で振る。



「い……っいいよ、そんな……っ印南くん、自分でしてなさい!」

「ですが、柴咲さんの方が寒そうですし」

「別にわたし、寒くないから!」

「さっきくしゃみもしてたじゃないですか。どうして見てたらわかることをそんな頑なに隠そうとするんですかね」

「そん……っわ、」



いつも通り淡々と、けれどもどこか呆れたように話して、印南くんは無理やりわたしの首にマフラーを引っかけた。

そして抵抗する間もなく、そのままぐるぐると巻きつけられてしまう。



「うん、俺より似合ってますよ」

「……ッ、」



まっすぐ目を見つめて言う彼に、かーっと頬が熱くなるのを感じた。

首周りどころか口元までをすっぽり覆うマフラーからは、いつか抱き合ったときに散々感じた彼のにおいがして。不覚にも体温が上昇してしまった気がする。

それを悟られないよう、プイと顔を逸らした。
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