冷徹なカレは溺甘オオカミ
「あ……あり、がとう」
「いいえ」
ビルの前まで来たらすぐさま返そう、と心に決めながら、ぽそりとお礼をつぶやく。
そんなわたしに印南くんは何を思ったのか、聞き間違いじゃなければ「ふっ」と小さく笑みをもらし、自分の口元を片手で隠した。
「……柴咲さんって、」
「な、なに」
「いや……気を悪くさせたら申し訳ないんですけど。柴咲さんってよく人から、『見栄っぱり』とか『意地っぱり』って言われません?」
「…………言われないし」
「今の間が気になるところですけど。まあ、そういうことにしておきます」
微妙に上から目線でそう言って、再び彼は前を向く。
わたしはといえばこっそりその横顔をうらめしげに見上げてから、彼と同じように視線を正面へと戻した。
……『見栄っぱり』とか、『意地っぱり』とか。そのかなーりいただけない言葉、実はよくお姉ちゃんや颯真に言われてるなんてこと、口が裂けてもこの男には言うまい。
心の中でそう完結して、わたしは自分の首元を守る布にそっと触れた。
悔しいけれど彼が貸してくれたマフラーはあたたかくて、さっきまでよりずっと、冷たい風が気にならなくなった。
……やっぱり、印南くんって実はやさしいよな。でもこれは、きっとわたしが年上で会社の先輩だからこそ、なんだよね。
なんか……なんか、それって……。
無意識ながら、なんだか不本意な方向に思考が傾いてしまいそうになっていたそのとき。
「──……柊華ちゃん?」
突然わたしの耳に届いたのは、深く考えるまでもなく聞き覚えのある声で。
ギシリと身体を硬直させ、おそるおそる、そちらに顔を向けてみれば。
「いいえ」
ビルの前まで来たらすぐさま返そう、と心に決めながら、ぽそりとお礼をつぶやく。
そんなわたしに印南くんは何を思ったのか、聞き間違いじゃなければ「ふっ」と小さく笑みをもらし、自分の口元を片手で隠した。
「……柴咲さんって、」
「な、なに」
「いや……気を悪くさせたら申し訳ないんですけど。柴咲さんってよく人から、『見栄っぱり』とか『意地っぱり』って言われません?」
「…………言われないし」
「今の間が気になるところですけど。まあ、そういうことにしておきます」
微妙に上から目線でそう言って、再び彼は前を向く。
わたしはといえばこっそりその横顔をうらめしげに見上げてから、彼と同じように視線を正面へと戻した。
……『見栄っぱり』とか、『意地っぱり』とか。そのかなーりいただけない言葉、実はよくお姉ちゃんや颯真に言われてるなんてこと、口が裂けてもこの男には言うまい。
心の中でそう完結して、わたしは自分の首元を守る布にそっと触れた。
悔しいけれど彼が貸してくれたマフラーはあたたかくて、さっきまでよりずっと、冷たい風が気にならなくなった。
……やっぱり、印南くんって実はやさしいよな。でもこれは、きっとわたしが年上で会社の先輩だからこそ、なんだよね。
なんか……なんか、それって……。
無意識ながら、なんだか不本意な方向に思考が傾いてしまいそうになっていたそのとき。
「──……柊華ちゃん?」
突然わたしの耳に届いたのは、深く考えるまでもなく聞き覚えのある声で。
ギシリと身体を硬直させ、おそるおそる、そちらに顔を向けてみれば。