冷徹なカレは溺甘オオカミ
お姉ちゃんはさっきまでよりさらに笑みを深くして、印南くんを見上げた。



「はじめまして~。あたしは柴咲 柊華の姉で、柴咲 瑛奈っていいます~」

「ああ、柴咲さんのお姉さん。どうりで似てますね」

「うふふよく言われます~」



実は一度寝てしまったことのある相手・印南くんと、その事情を知っている自分の姉が、なぜか向かい合って話をしている。

一見ただの雑談シーンなそれがわたしにはものすごく恐ろしい光景に思えて、若干無理やり会話へ割り込んだ。



「お、お姉ちゃんは、なんでこんなところに? ていうか時間平気? 用事とかあるんじゃないの?」



お姉ちゃんは自分の最寄り駅前にある雑貨屋さんで働いていて、休みはシフト制だ。

だから平日のこの時間に街を歩いているのは何の不思議もないけれど、オフィスビルが多くあるこのあたりで姿を見かけるというのはめずらしい。


実は内心必死なその質問に対し、お姉ちゃんが笑みを崩さないままくるりとわたしに顔を向ける。



「あたし、この近くのヨガ教室に通ってるの。でもまだ時間は余裕あるから大丈夫~」



『大丈夫~』じゃないわ!! わたしの心理状態が!!!

実は計算高いくせに一切それを表に出さないこの姉が何かしでかす前に、できるだけすみやかにこの場から退散していただきたい……!! もしくはこっちがしたい……!!
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