冷徹なカレは溺甘オオカミ
「柴咲さんとお姉さん、似てるようで似てませんね」

「……うんまあ、それよく言われる」




再び並んで歩き出しながら淡々と印南くんが言った感想に、わたしは渋い顔でうなずいた。

どうせわたしは、瑛奈お姉ちゃんみたいにかわいげないさー。



「でも、姉妹仲は良さそうですよね。ふたり姉妹なんですか?」

「ううん、大学院生の弟もいるよ」

「へぇ。なんか、全員そろうとインパクト強そうです」

「……濃いよ、姉と弟は。わたしだけふつー」

「俺にとっては、柴咲さんも濃いですけどね」

「なにそれ」



ふ、とつい笑みがこぼれる。

だけど斜め上から印南くんが見ていることに気づいて、あわてて口元を引き締めた。



「……印南くんは? 兄弟」



横断歩道の赤信号で立ち止まりながら、話の流れでそう訊ねてみる。



「兄がひとりいます。俺より2歳年上ですね」

「へー。じゃあ、お兄さんわたしと同い年なんだ」



なんとなくそう言っただけなのに、わたしの言葉を聞いた印南くんは、そこはかとなくあわれみに満ちた視線をこちらに向けてきて。



「……柴咲さん。非常に申し上げにくいことなんですが、ウチの兄の年収はおそらく一千万を超えてはいないと思いますし、俺様イケメン御曹司でもないので……」

「だからもうその話はするなって言ってんでしょうが」



ていうか毎度のことながら絶妙なタイミングでいっちょまえに先輩いじってんじゃないわよと、そのキメ細かいほっぺたをぐいぐいつねる。

俺様イケメン御曹司ネタ、いつまで引っぱる気なんだこのナチュラル毒吐きボーイは。年収云々の話もただの根も葉もない噂だし!
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