冷徹なカレは溺甘オオカミ
「最近の柴咲さんは、以前よりずっと俺の言動にイイ反応を返してくれるので。その点は褒めて差し上げますよ」

「な……っ」



すっかり見慣れた無表情を見上げながら、カッと頬に熱が集まったのを感じた。

……イイ反応って!! やっぱり印南くん、いつもわたしがあわてるの見て実は心の中では楽しんでるんだ……!!


動揺を落ちつかせるように、ふう、とひとつ、息を吐く。



「……印南くん、わたしのことずるいって言ったけど。きみの方が、よっぽどずるいと思う」

「どうしてですか?」

「だって印南くんって表情が簡単に変わらないから、本心では何考えてるか読めないんだもん」



じっとりした視線を向けてそう言えば、彼は小さく首を傾けてみせる。



「俺、相当素直ですけどね。顔以外」

「だからそこが問題なんだっての……!」



ああもう、やっぱり掴めないわ、印南 大智。

なんかもう、一生このひとには口で勝てない気がする。


自分で思い浮かべた考えに、ついげんなり。

けれどもそれと同時に、『でも、』と別の考えも浮かんできて。


……印南くんの、この無表情があるからこそ。

彼にいくら、普通だったら勘違いしてしまいそうな言動をとられても、最終的に『やっぱりからかってるだけなんだ』って、自分に言い聞かせることができるんだよな。

たとえば印南くんクラスのイケメンに、とろけるような笑顔付きで「柴咲さんかわいいですね」なんて言われた日には……絶対、勘違いしちゃうって。間に受けちゃうって。

だから、まあ……いつも表情が変わらない彼が相手だと、こっちも勘違いすることがなくて。それはそれで助かってる、のかな。


そんなことを考えながら思わず深いため息をつくと、それを見下ろしていた印南くんが、ふっとその長いまつ毛を伏せた。



「……すみません、柴咲さん。実は俺のこの鉄仮面は、幼い頃両親をいっぺんに交通事故で亡くしてしまったことがキッカケで──……」

「えっ、」
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