冷徹なカレは溺甘オオカミ
「とかいうお涙頂戴的なエピソードもなく、ただどうしてか昔からこれがデフォルトなだけなんです。すみません」

「いやもうそうだろうとは思ってたけどさ」



急にテンション下げてアンニュイな雰囲気出されるとびっくりするわ! まぎらわしい言い方すんな!

印南くんに変な幻想を抱いてた矢野さんとは違い、こんなもんでしょと予想はついていた。

だけど一度きゅっと締めつけられて速まってしまった鼓動は、簡単には元に戻らない。わたしはさりげなく、左胸のあたりを片手でおさえた。



「でもこの標準装備、わりと便利なこともあるんですよ。主に柴咲さんをからかいたいときとか柴咲さんで遊びたいときとか」

「そういうのいらないからほんと……」

「柴咲さんかわいいですね」

「この流れでそんな冗談をホイホイ真に受けると思ってんの……?!」



まったくもう!とわたしは完全に怒りモードで、歩く速度を速める。

けれどもともと印南くんはわたしのスピードに合わせてくれていただけなので、多少早足にしたところでまったくダメージは受けていないようだ。



「柴咲さん、超かわうぃーです」

「おだまり印南……! ていうかチャラ男風の口調全然似合ってないから!」

「えー」

「『えー』じゃない!」



そうやって不毛な言い合いを続けながら、……それでも彼の言葉にまんまと顔が熱くなってしまっていることは、なんとしてでも隠し通そうとわたしは必死なのだった。
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