冷徹なカレは溺甘オオカミ
「自業自得でしょ。……わたしだって、久々に会った同期への第一声が『黙って』になるとは思ってなかったわ」

「あれ? もしかして、同期なのに何も言わないで来たこと怒ってる?」

「別に怒ってないわよ。呆れてるだけ」

「つれねーなあ」



そうは言いながらも、わたしを見下ろす彼の顔はどこか楽しげだ。

わたしはわたしで、口の減らない梶谷と会話する久々のこの感覚に『やっぱり変わらないなあ』と考えて苦笑がもれる。



「ハイハイハーイ、ちょっとごめんね~」



そこに割り込んで来たのは、やたら明るい矢野さんの声だ。



「久々の再会で盛り上がってるとこ悪いけど、ここにひとりだけ状況が理解できていない人がいるので簡単に説明ターイム」



そのセリフに、わたしと梶谷はそろってきょとんと目をまたたかせる。

両手を挙げつつ声高らかに宣言した矢野さんは、わたしの左隣りにいる人物へと目を向けた。



「印南は、梶谷と会うの初めてだよな?」

「はい」



……ああ、そっか。

うなずいた印南くんを見て、心の中で納得する。

今年4月に本社へ異動して来たばかりの印南くんは、きっと梶谷のことを知らない。

梶谷も梶谷で、興味深げな視線を印南くんへと向けていた。
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