冷徹なカレは溺甘オオカミ
「こいつ、梶谷 啓吾(かじたに けいご)ね。去年まではここの営業第2グループにいて、今は上海支店にいる。ちなみに、柴咲さんと同期」

「矢野さん、人のこと指さしちゃダメっすよー」



軽口を叩く梶谷は盛大にスルーして、次に矢野さんは印南くんの方へあごをしゃくってみせる。



「で、梶谷。柴咲さんの隣りのこの若者は印南 大智。今年の春に名古屋支店から異動してきたイケメンな」

「ちょっと矢野さん、イケメンなら俺も負けませんけど」

「おまえはチャラすぎだアホ」



うーん、このふたりのこんなやり取り聞くのも久しぶりだなー。

思わず感慨深く見つめてしまっていたら、不意に梶谷が何か思い出したように声をあげた。



「ああ、イナミくんってあの、柴咲と付き合ってるっていう変わり者の印南くんね! さっき他のヤツらから聞いたわ!」

「ちょっと梶谷それどういう意味? わたしと付き合うと変わり者なわけ??」

「いやー柴咲、冷ややかな視線もグッとくるわー。やっぱこの後ホテル行」

「永遠に眠って梶谷」



軽すぎるこの男の発言には、もはやため息しか出てこない。

根も葉もない噂ばかりなわたしと違って正真正銘ただれた性生活を送っているチャラ男の梶谷は、いつだってこんな調子だ。

同期としてこのオフィスで一緒に働いていた頃も、こうやってまわりに誤解されそうなことばかり言っていて。

まあそれは、女性社員全般に対して同じ感じだったんだけど……わたしの良くない評判も相まってか、ヤツが上海支店へと転勤になるまでは『梶谷と柴咲はセフレだ』なんて迷惑極まりない噂まであった。

まったく、失礼なことである。
< 133 / 262 >

この作品をシェア

pagetop