冷徹なカレは溺甘オオカミ
「っと、さすがに彼氏の前で誘うのは良くないよなー。悪いね印南! そんで今後ともよろしく!」

「印南くん、別によろしくしなくていいから。その左手ひねりあげてやってもいいから」

「こえーなカノジョ~」



淡々と吐き捨てたわたしにちらりと視線をくれてから、それまで黙っていた印南くんが椅子から立ち上がった。

梶谷が差し出していた左手に、自分の手を重ねて握手する。



「はじめまして、営業第1グループの印南です。梶谷さんのことは、名前だけ知ってました。こちらこそ、よろしくお願いします」

「おっ、俺有名人! よろしくなー」



にこっと笑顔を見せる梶谷と、相変わらず無表情な印南くん。

このふたり、正反対すぎておもしろいわー。でも梶谷は一見不真面目っぽいわりに、人懐っこくて仕事は一生懸命で、お客さんにも好かれてた。

チャラすぎる発言はいただけないけど……そういうところがあるから梶谷は憎めないし、同期としては好きなんだ。本人には口が裂けても言ってやらないけど。


というか誰よ、わたしと印南くんのことをヤツに教えたのは……。

付き合ってるっていっても“偽恋人”だから、あまり広めて欲しくないんですけど!



「そうだ柴咲、今日仕事の後ヒマ? つーかもちろんヒマだよな?」

「なんで決めつけてるのよ……ヒマだけど」



はっきり断定されたあたりに釈然としないながらも答えると、梶谷はまたにっと笑う。



「よしっ! じゃあ今日は、久々に同期会な! 梅野(うめの)も誘おーぜ」

「ええ? 梅野はもう二児のママなんだから、さすがにいきなりは無理でしょ」

「たぶん大丈夫じゃね? 梅野には事前にこっち帰ってくること教えてたから、飲みに誘うかもってのも伝えといたし」

「……ちょっと待って……ほんとにわたしにだけ言ってなかったわけ? 薄情な同期ですね」

「はは、柴咲を驚かせようと思って!」
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