冷徹なカレは溺甘オオカミ
梶谷が指定した居酒屋『達磨』は、会社から歩いて5分ほどのところにある。

出入り口の引き戸を開けたとたん、あたたかい空気とおいしそうなにおいに包まれた。店員さんに挨拶をしながら足を進めると、すぐに奥の小上がり席に見知った顔を見つける。



「ごめん、遅くなっちゃった」



言いながら近づいて行けば、気づいたふたりの男女がほぼ同時にこちらへと顔を向けた。



「おっ、柴咲来たなー!」

「お疲れ~ていうかちょっとちょっと柴咲ぃ、あんた彼氏できたってほんとなの??」



開口一番、すでに出来上がっている様子な元同期・梅野 里佳子(うめの りかこ)に食い込み気味で訊ねられた。

わたしは思わず口をへの字に曲げて、着ていた黒いコートを脱ぐ。



「梶谷……あんた梅野になに吹き込んだの」

「べっつに~。久しぶりに本社行ってみたら、前はあんなに男っ気なかった柴咲にイケメン彼氏がいてびっくりしたって」

「余計なお世話よ」



話しながらコートをかけたハンガーを壁に引っかけて、わたしも同期ふたりが陣取る小上がり席に腰を落ちつかせた。

店員さんに生ビールを注文し、おしぼりで手を拭きつつジト目で梶谷を非難する。
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