冷徹なカレは溺甘オオカミ
……かわいい、印南くん。

失礼ながら、ついそう思ってしまって。きゅんと胸が締めつけられたのと同時に、身体が熱くなる。

そしてなぜかこのタイミングで、さっきの彼の言葉が、頭の中によみがえった。



『柴咲さんのかわいいところを知らないなんて、本当に、かわいそうです』



──ああ、もう、どうしよう。

どうしようわたし、完全に、落ちてしまった。



「……印南くん、手……」

「ああ、すみません」



わたしの小さな申し出に、印南くんがパッと手を放した。

体温が離れて、さみしい。けれど心臓がドキドキしすぎてこれ以上もちそうになかったから、それ以上に安心した。


少しの間の後、こちらとは視線を合わせないまま、彼が話し始める。



「あの、柴咲さん。石井さんと清田さんは、別に悪意があってああいうことを言っているわけではないと思うんです」

「え?」



予想外の話に、思わず目をまたたかせた。

そんなわたしの視線の先で、彼は続ける。



「たぶんなんですけど、柴咲さんの噂をしたがる男性社員は、みんな悔しいだけなんですよ」

「……悔しい?」

「はい。……身近にこんなに綺麗な人がいて、だけどその人は、全然自分たちのことなんて眼中にない感じでいつもクールに仕事してて。相手にされないことが、悔しいんです」
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