冷徹なカレは溺甘オオカミ
「あなたたちが付き合ってるっていう話は、少し前にシステム課の方に聞いたんですけど。でもあたしたちどうしても、納得できなくて」



ねぇ?と、そこで彼女は、自分の両サイドに控えているふたりに目配せする。

話を振られた彼女たちはこくこくとうなずいて、相変わらずわたしに剣呑な眼差しを向けてきた。



「………」



なんとなく、理解できた。つまりこの3人は、印南くんのことがすき、もしくは憧れてるとかとりあえずまあ好意を持っていて。

それがいきなり、ダークホースなわたしがある日突然彼女の座についていたもんだから……鬱憤がたまって、こうして本人を呼び出したってわけか。

印南くんのあまりの無表情っぷりに、女子社員はみんな鑑賞用に徹してるものだと思ってたんだけど……まだいたのか、勇者。

すごいなー、若い子って。なんでこんな、パワフルに動けるのかなー。

半ば感心しつつも、頭の片隅ではたしかな不満もわき起こる。


……納得、できないって。なぜ全然関わりのないこの女子たちに、そんなことを言われなければならないんだ。

というか、ほんとのところ、わたしたちの関係は“偽恋人”だし。

印南くんのお情けで、成立した関係だし。

でもまあそれを、この逆毛をたてた猫のような子たちに言うわけにもいかなくて。



「……それで、どうなんですか。本当に、ふたりは付き合っているんですか?」



無言を貫くわたしにしびれを切らしたように、阿部さんが再度訊ねてくる。

……わたし、一応年上で先輩なんだけどなー。たしかこの子、印南くんと同い年だっけ。

よくよく思い返してみると、部署も違う阿部さんたちが印南くんに話しかけている姿は、しょっちゅう見かけていた気がする。
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