冷徹なカレは溺甘オオカミ
その言葉には多少当たらずとも遠からずな部分があったので、肯定はしないまでもつい押し黙る。


……やっぱりわたしは、客観的に見たらひどいことを彼にしてしまったんだ。

わたしの方が年上で先輩ってだけで、フェアじゃないもんね。

しかもあんな、断りにくいことを、言っちゃって……。



「柴咲さんって、お金持ちと不倫とかしてるんでしょ? なのに職場の後輩にまで手を出すなんて、信じらんない」

「その顔で、一体これまでどれくらいの人をだましてきたんですか?」



素直に自分の非を反省していたのに、そこでわたしは、ついカチンときてしまった。

……言わせておけば、好き放題貶してくれちゃって。

噂はともかく、わたし、この子たちに対してここまで言われることした? してないよね?


そろそろ反撃のひとつでもしようと、わたしはすうっと息を吸い込む。



「……あの。あなたたち──、」

「どうせ、柴咲さんは知らないんですよね? 影で印南さんが、なんて言われてるか」



え、と瞠目して、言おうとしていた反論があっさり途切れた。

閉口したわたしに、さらに阿部さんたちはたたみかけてくる。



「みんな言ってますよ、印南さんは趣味悪いって。いくら美人っていっても、こんな良くない噂ばかりの人と、付き合うなんてって」

「わかりますか? あなたのせいで、印南さんまで悪く言われるんです」

「………」



彼女たちの言葉に、ガツンと頭を殴られたような気がした。

棒立ちしたまま、急にまわりの音や声が遠くなった感覚がする。
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