冷徹なカレは溺甘オオカミ
……わたしの、せいで。

わたしのせいで、印南くんまで、周囲の人たちに悪く言われてる。

女子が使う『みんな言ってた』なんてセリフは、どうせ仲間内だけで話してることを誇張してるだけなんだって。
いつものわたしなら、わかってるはずなのに。

それでもこのときばかりは、動揺した頭で、その言葉を素直に受け取ってしまう。



「よく、考えてください。自分がどれだけ、まわりに迷惑をかけているのか」



見事な捨てゼリフと冷たい眼差しを残して、阿部さんたちはわたしの前から去って行った。

遠のいていく足音を聞きながら、呆然とその場に立ち尽くす。



『あなたのせいで、印南さんまで悪く言われるんです』



頭の中で何度も、先ほどの阿部さんの言葉がリピートしている。


……やっぱり、わたしじゃダメなんだ。

わたしみたいなのが、印南くんと一緒にいちゃ、ダメなんだ。


うつむきながら、思わずにじみそうになる涙をぐっとこらえる。


……大丈夫。短い間だったけど、いい夢を、見させてもらったから。

印南くんとの、偽りの関係が終わったって──……思い出を胸に、またこれからも、がんばっていける。


自分に言い聞かせるように、そう、胸の中で繰り返して。

わたしはようやく顔をあげて、その場を離れるべく足を動かした。
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