冷徹なカレは溺甘オオカミ
◇ ◇ ◇
次の日の昼休み。
同僚たちが各々自分のデスクを離れていく中、ふと隣りを見ると、印南くんは席についたままで。
どうやら今日は、先輩たちからのお誘いはないらしい。彼はデスク下からコンビニ袋らしきものを取り出して、それを広げ始めた。
久しぶりに、印南くんと隣り合ってのランチ。不可抗力で、鼓動が速まる。
……まわりに人がいない、今が、チャンスだ。
デスクの上に置いたお弁当の包みをほどこうとしていた手に、ぎゅっと力がこもる。
「……あの、印南くん」
「はい」
まばたきをして、いつもの平坦な声で彼が応えた。
わたしはあくまでデスクに視線を落としながら、こくりと唾を飲み込む。
「あの、ね、……」
──言わなきゃ。ちゃんと、わたしの口から。
そうは思うのに、次に続けようとする言葉がのどの奥でつっかえて出て来ない。
頭の中では、言うべきことがしっかりまとまっている。
それでも身体は素直なようで、本当は口にしたくないと本心では思っているそれが、うまく声に乗って出て来てくれないのだ。
そうこうしているうちに少し離れたデスクから携帯電話の着信音が聞こえて、びくりと肩がはねた。
そのまま抑え気味の音量で通話し始めた声を遠く聞きながら、どうしようかと内心迷っていると。