冷徹なカレは溺甘オオカミ
「柴咲さん、体調良くないんですか?」

「え」

「なんだか、いつもより元気がないようなので」



彼にそんなことを言われるなんて思っていなかったわたしは、つい目をまるくする。

だけどハッとして、すぐに言葉を返した。



「そんなことないよ。いつも通り」

「……そうですか?」



どこか納得いかないように首をかしげるけれど、それ以上追及はしてこない。

わたしはこっそり胸の中で安堵して、ごまかすようにお冷やを口に含んだ。


……いけない。彼に気遣われるくらい、態度に出していたなんて。

せっかく、印南くんと一緒にいるんだから……せめてまわりに会社の人がいないときくらい、楽しまないと。


でも、どうにももやもやしてしまう。その原因が今朝見た光景にあるということは、自分でもわかりきっていた。

だけど『あの女の子は誰?』、なんて。本当の彼女でもないわたしに、そんなこと、訊く権利なんてないような気がするのだ。


答えの出ない問題をぐるぐる考えていたら、厨房の方からひとりの店員さんがこちらに歩いて来るのが見えた。

手には料理の載ったおぼんを持っている。きっとこの席の分だとわかって、わたしはなんとなく姿勢を正した。
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