冷徹なカレは溺甘オオカミ
「えっ、ちょっ、ダイくん……あの、この美人さんは……?」

「職場の先輩」



きっぱりハッキリ、印南くんは迷いなく言い放った。

彼の答えに「ああ、そっかあ」とどこか安心した様子で、彼女は笑う。



「すみませーん」

「あ、はい!」



少し離れた席の別のお客さんに呼ばれ、「失礼します!」と一礼した鈴音さんはあわただしく去って行った。



「……柴咲さん、食べないんですか?」



彼女の後ろ姿を見つめてぼんやりしてしまっていたわたしに、印南くんが淡々と声をかける。

我に返ったわたしは「あ、うん」なんて曖昧に返事をして、プレートの横のフォークを手に取った。

おいしいランチ。なのにまったく上がらないテンションのまま、ただ機械的にプレートに載った料理を口に運んでいく。


……聞けない。けど、なんとなく、察しがついてしまった。

だって、全部が、教えてた。
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