冷徹なカレは溺甘オオカミ
『え、ダイくん?!』

『……鈴音?』



親しげな、ふたりの呼び方。



『ステーキごはんはダイくんだよね~牛肉好きだもんね!』



わたしの知らない、印南くんの好きなもの。



『ダイくん……あの、この美人さんは……?』



不安そうな、鈴音さんの質問。



『職場の先輩』



それを払拭するように、即答した印南くん。



『ああ、そっかあ』



彼の言葉を聞いて心の底から安心しきった、鈴音さんの笑顔。


わたしが入る隙なんてないと、言われているようだった。

やっぱり今朝の鍵も、見間違いではなかったんだ。


馬鹿だ、印南くん。こんなかわいい彼女がいながら、わたしのことも相手にしてたなんて。

本命の前では、はっきり「職場の先輩」って答えるくせに。あんなキスまで、するなんて。

……おかげで、勘違いしそうに、なったじゃない。

わたしは、印南くんにとって特別なんだって──そんな夢みたいなこと、考えちゃったじゃない。
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