冷徹なカレは溺甘オオカミ
プレートの料理をすべて食べ終えたあたりで、わたしはお手洗いに席を立った。

そうして戻って来たとき、印南くんの傍らに鈴音さんが立っているのを見つけて、つい壁の影に隠れるように立ち止まる。

小さめの音量で話しているふたりの声は、それでもかすかに、耳に届いた。



「やっぱり、今日遅くなりそうー。合鍵使ってくつろいでてね。ていうか、ほんとに今日ウチ来れるの?」

「行くよ。久々だし、なるべく早く仕事切り上げる」

「あは。はりきってるなー、ダイくん」

「だって、かわいくて仕方ないから」



そう言って口元を緩める彼に、鈴音さんはしあわせそうな笑顔を向けている。


……ああもう、完敗じゃん、わたし。

あんなの、入り込めるわけ、ないじゃん。


食べ終わった食器を手に鈴音さんが去ったのを見計らって、わたしは席に戻った。

気づいた印南くんが、出していたスマホをポケットにしまう。



「柴咲さん。このデザート、鈴音からのサービスらしいです」

「え、」



たしかに、テーブルの上には頼んだはずのないミニサンデーがふたつ置かれている。

「どっちがいいですか?」と訊かれ、「先に選んでいいよ」と答えれば、彼は遠慮しつつキャラメルソースの方を選んだ。

鈴音さんには、きっと印南くんが……チョコレートサンデーじゃなくキャラメルサンデーを選ぶってこと、お見通しだったんだろうな。

そう思うと、胸が苦しくなる。
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