冷徹なカレは溺甘オオカミ
「婚約者なんです。俺と鈴音」

「……え、」



わたしの一切の動作を止める威力を持った告白に、言葉を失う。

溶けかけたソフトクリームをスプーンですくいながら、印南くんは続けた。



「別に、金持ちの政略結婚とかじゃないですよ。俺たち、実家が隣り同士で。まあ昔から家族ぐるみで仲良くしてたんですけど、俺のこの愛想のなさを心配したウチの親が、将来は鈴音に嫁に来てもらえって言い出して」

「………」

「でまあ、向こうの親もどこぞの馬の骨にやるくらいなら俺がいいって言ってくれて。当人同士も恋愛には淡白だったんで、別に反発することなく『じゃあそうするか』って感じで今日まで来たんですけど」



……付き合ってる、っていう話じゃなく、まさか婚約の話が出て来るとは。

なんかもう、いっそ清々しい感じ。こんなんじゃ、涙も出ないっていうか。



「……柴咲さん?」



──いや、嘘だ。今、めちゃくちゃ泣きそう。

泣きそう、だけど……そんなことしたら、わたしの気持ちが、間違いなくバレてしまう。

そんなの、絶対、だめだ。
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