冷徹なカレは溺甘オオカミ
でもまあ、結局それ以上感情を動かされることはなくて。

美人だけど、だからといって別にどうこうしたいとまでは思わない。

どうせ自分にそんな機会は巡って来ないだろうし、単純に『たまたま隣りの席の先輩が美人でラッキー』という思考で止めておく。

何はともあれ、会社は仕事をするところだ。下半身で物事を処理していたら、秩序は乱れまくりである。



「えーと、印南くん?」



戸惑うようなその声に脳内から意識を戻せば、目の前に立つ柴咲さんはなんだか困ったような顔で俺のことを見上げていた。

どうやら、他所ごとをしながら無意識に彼女を見つめてしまっていたらしい。ひとつまばたきをしてから、「すみません、何でもないです」と表情を変えずに答えた。



「柴咲さん。この通りちょっとわかりにくい印南くんだけど、隣りの席だし気にかけてやって」



わかりにくいって、それ、本人目の前にして言っちゃうのか部長。

けれどそれには反論する余地もないので、俺は大人しく黙っておく。



「……印南くんは、ポーカーフェイスってやつなのね」



苦笑いの表情も、彼女は綺麗だった。
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